命の誕生に迫る惑星探査機の推進エネルギーもクリーンな時代に!

人工衛星・探査機

1997年、アメリカから一つの惑星探査機が打ち上げられた。その名は”カッシーニ”

「地球は太陽の中心を回っている」と”地動説”(この頃は地球を中心に回っている”天動説”が宗教上の観点からも根付いていた)に賛同した中世の天文学者”ガリレオ”が望遠鏡で土星をみてから約50年後、1675年に土星の環に隙間があることを発見したイタリアの天文学者”カッシーニ”から由来した名前をもつ探査機。

このカッシーニ、金星→木星といろんな惑星をスイングバイ(惑星の引力をうまく使って推進力を得て、他の軌道にうつる)わたりあるき、最後のたどりついたのが大きな環をもつ土星。

土星には60個以上の地球の”月”のような衛星があり、そのうちの2つの衛星 ”タイタン”と”エンケラドス”には注目が集まっていた。

その理由は、共に生き物の源となる”有機物(炭素が含まれた化合物)”があることがわかってきていたからだ。僕らの体にも骨にしろ筋肉、脳や内臓にしろ炭素:Cが含まれている。

カッシーニがタイタンやエンケラドスに接近し、いろんなデータを取得したことで有機物があることが証明された。ちなみに有名な写真はこれ↓ エンケラドスから岩石を含んだ塩水が吹き出している。この吹き出したものが、実は土星の環の一つになっている。

カッシーニの最後は2016年、その役目を終え、土星の大気圏に突入した時にはちょっとしたニュースになっていた記憶がある。

これらの星の内部ではもしかすると微生物のような”生き物”いるかもしれないと世界で研究がすすんでいる。

 

僕は探査機に搭載されたセンサーなど観測系の機器は自分の分野と離れているので、あまり詳しくないが、カッシーニを土星まで運んだ原動力:推進する力は液体燃料、今の人工衛星やロケットの姿勢制御などでもよくつかわれている”ヒドラジン”とよばれる燃料と酸化剤を混ぜ、燃焼ガスで軌道修正、姿勢制御を行っている。

でも、このヒドラジン、窒素と水素の化合物。アンモニアのようなにおいがし、引火性が高く、直接触れたりすると肌がただれたり、人が吸い込むと内臓の機能障害をもらたす”毒物”だ。

実際に扱う場合は宇宙服のような服をきて厳重に取り扱われている。そうなると設備も専用化が必要で、実際に充填できる設備・場所は国内でも限られている。

なので、近年は先述記事に書いたような電気推進系、そして”低毒スラスター”というヒドラジンを使わない液体燃料の開発が進んでいる。

この低毒は具体的には消毒液:オキシドールの原料となっている過酸化水素や火薬の原料となっている硝酸アンモニウムと水やメタノールを混ぜたものといったようなものだ。毒性は低く少し肉厚なゴアテックスのようなものを着るだけいい、肌に触れてもずっと残るような炎症にならないものになる。

そして、機能を示す上で重要な比推力(少ない燃焼でどれだけの重さを飛ばせる力が出せるか)も新たな燃料で従来より上げる研究が進んでいる。

もちろん、電気で進む電気推進系スラスターも進んでいるが、やっぱり従来のある程度出来上がっている仕組みを燃料の中身をかえるだけですむ方が、スピーディーに人工衛星に搭載ができる。

はやぶさ2に搭載されたイオンスラスターは電気推進系スラスターなのだが、まだ、推進力の大きさという点では液体燃料の方が高く、これからさらに研究が必要なのだ。

自動車でも今は電気自動車の話題が大きいがバイオエタノールなどの液体燃料の研究も進めらており、2050年には約1/4がバイオエタノールなどがガソリンやディーゼルに変わる液体燃料になると予想されている。

そんな惑星探査、日本では次の大きな惑星探査として火星探査機が計画されている。これはMMX:Martian Moons eXploration(火星の月(衛星) 探査))とよばれる火星の衛星を探査してはやぶさのようにサンプルを地球に戻ってくるというミッション。

打ち上げは2020年代前半で現在、少しずつ動き出している。僕ももしかするとたずさわる可能性がある。その時にはどんな推進力が使われるのだろう。従来のものは安定性はあるが、より効率的になる液体燃料が使われることが火星探査では必要な気がする。こらからはきっと太陽系外を超え、探査がもっと進んでいくからだ。その時には少ない燃料、いや燃料は探査機自前で作りだす、星の光のエネルギーを変換し、推進力にかえていくようなものにならないと太陽系外へはでられない。

そして、夏休みということでちょっとした情報。

2019年8月12日(月)は月と土星の位置が最も近くに見える天体現象がある。

土星が下図のように地球の近くに来ている時期なので、よく輝いて見えます。

望遠鏡や双眼鏡があれば、土星の色や環も観察も可能。

多くの衛星を持つ土星は地球の約9倍の半径の惑星 アンモニアの結晶によって黄色い惑星に見えている。太陽のまわりを1周回るのには、地球の1年に対し、29.5年かけて太陽のまわりを一周している。

天体望遠鏡だと先ほどの衛星”タイタン”もみることができるので、お持ちの方は命の可能性を想像しながらみてみるとより星をみる楽しみが増えるかもしれない。

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