衛星データをつかった”世の中に役立って、収益につながるもの”のヒントを得ようと、先週、さくらインターネットが主催する”衛星データを使ったパネルディスカッション”に参加した。
今回のテーマは「保険・金融」
大まかな内容は
①宇宙ビジネスで衛星データを使った分野が一番大きい(世界で7兆円だったかな?)
②衛星データで大きな要素は”何を見るか”、”時間経過での変化”、”空間(解像度)”
③世界での”保険・金融”分野での事例紹介
④ディスカッション:衛星データと地上でのデータの掛け合わせとデータ蓄積がカギ
といったもの
①はさておき、②の衛星から”何を見る?”は基本的には光(人間の目で見えるもの、見えないものも含めて 見えない光の方が多い)で農作物から反射する光で”どんな農作物がよく育っているのか”、”海ではどこで魚が好むプランクトンがよく発生しているのか”ということがわかる。
”時間経過”は最近よく起こる自然災害でどう変わったか?”山の地滑り”や”河川の氾濫”、また少し変わった観点では東京オリンピックにむけて、”国立競技場の工事がどう進んでいるか”など。
そして、”空間”は解像度。簡単にいうと画面の1ピクセルが何センチ、何メートルにあたるかだ。30センチだったら、車の車種も判別できるが、2メートルなら車があるかないかだけしわからないといった具合だ。
③の事例紹介では、なかなか面白い事案があった。
大雑把にいうとアイデアさえあれば衛星データといろんな掛け合わせができる。
”保険”ではアメリカでよく起こる山火事に対しての保険の事例
被害を調べるために活用しているが、データが蓄積されてきているので、どういった地域で山火事が起きやすいかが推測できるようになりつつある。
これを利用して、そういった地域に住んでいる人に適切な保険について説明することができるようになる。DELOSというこの会社の見込みでは全米で約1800万世帯が適切な保険に加入していないと算出している。
これは日本でも同じことに使えるようになる。これだけ自然災害、特に台風などの水害に対して災害保険に入ることが今後重要になってくる。
でも、”住んでいる地域はどんなリスクがあるか?、どのくらいの金額の保険に入ればよいのか?”がわかりにくい。
そこで、衛星データと過去の被害状況を掛け合わせればどんな地域、どんな地形だと被害が起きるリスクが高いかが精度よくわかるようになり、適切な保険範囲、保険額を説明できるようになる。
”金融”の例ではこれもアメリカのSPACEKNOWというベンチャー企業
アフリカ諸国の経済成長率は高いと言われているが本当にそうなのか?、投資に値するのか?ということから、「アフリカの都市でどれだけ夜間照明が広がっているのか」というデータで国の発展度合いを調べようとというもの
あとはコンクリートの施工率や道路の舗装率といったものでも経済成長が指標通りに発展しているかをみれるようになっている。
日本でも夜間照明は過疎化が進んでいるのか?、どの都市が発展しているのか?を可視化できる。
データから調べ、確からしさを確認し、店舗の出店計画や住んでいる人のサポートビジネスなどにも役立てることができるかもしれない
そんな中、”リスク”という観点でこんなことを考えた。
「時間経過とともに変わる海の底の深さを正しく観測できないか」
それはたまたまロケットの運搬でそんな事例があったからだ。
ロケットの打ち上げは鹿児島の種子島から打ち上げられる。
この”島”という点はメリットもありデメリットもある
メリットはJAXAのホームページなどでも書いてあるが、ロケットが使う燃料をよりすくなくできる点とそれに伴う安全面からだ。
ロケットを飛ばす時はより赤道に近いほうがいい。地球は約24時間で自転をしている。24時間で最大の距離を走っているのはもっとも径が大きい赤道になる。ということは同じ時間で最も距離をかせいでいるので速度が最大になる。イメージはこんな感じだ。
それともう一点、地球の自転は上図のように西から東に回っている。
ロケットの打ち上げもこの西から東の回転を利用したほうがよりロケットが加速できる。
また、東向きに打ち上げるので、万が一ロケットが落下しても人がいない東側が開けているところということでも種子島が選ばれている。
ちなみに僕も少したずさわっている日本の小型ロケット会社 ”スペースワン” 。こちらもそういった条件から紀伊半島の最南端 和歌山県串本町がロケットの発射場となっている。
一方のデメリットは島なので運ぶのが大変で、ロケットの機体といった大きなものを大型船で運ぶことになる。
となると陸路よりいろんなことに気をつけないといけない
例えば、天気。陸路であれば多少の悪天候は問題ない。だけど、海となるとそれが違ってくる。波が高ければすぐに船は欠航になって、1日2日のウェイティングをよぎなくされる。
また、ロケットの機体は毎日運んでいるわけではないので、ロケット機体を港から荷揚げをするときは近くの港を借りなければいけない。
そうすると、そこで普段から使っている主に漁業をやっている方たちと事前交渉が必要になる。
僕らがそこにお邪魔をするのだから当たり前だが、そういったところでも打ち上げ日の制約がでてくる。
そして、重くて大きいものを港で降ろす時は船が底付きしないように調べておかないいけない。普段はそんな重いものを荷揚げすることがないから、海底がそんなに深くなっていないからだ。
そこで”衛星データ”をつかった水深の調査”という方法がもっと確立されれば役に立つと思っている。これはSDB:Satellite Derived Bathymetry(衛星から届けられた測深)という手法が研究されていて、以前からサンゴ礁など浅瀬を船が通るときに世界で使われている。
これは海中や海底から跳ね返ってくる光を人工衛星がとらえてその度合いをデータとして測定することで水深がわかるといったものだ。(下図参照)
ただ、実用面では衛星データの精度や水質などによっても深さを測るのに影響があり、何十センチ単位までの精度までには上がっていないようだ。
潮の満ち引きで最大1m位は潮位が変わるので、最低でも1m以内の精度は必要だ。
今後は衛星データの精度もあがってくる。ディスカッションでも話していたが、衛星データだけでなく地上の既知データと衛星データの積み重ねで推測できる精度をあげていくことができる。
そして、この”海の深さをより正確に測ることができるようなる”ことは僕が好きなサーフィンにも生かせると思っている。
波乗りをしている人は知っていると思うが、「あのポイントは砂がついているから最近はいい」という話をすることがよくある。”砂がついている”とは海底が浅くなっているのでそこで波が立ちやすくなるからだ。
海が悪天候であれた後などは砂が運ばれてきて、底が浅くなり波がよくなったりすることがある。
海岸周辺のこの”砂がついて底が浅くなった”変化が衛星画像データからみれるようになるとどのポイントで波が立ちやすくなっているかがわかるようになる。そんな情報を波情報と共にサーファーに提供できるようになると、この情報を使って波乗りポイントを決める人には役に立つことになる。
「衛星データ×”〇〇”でいろんな使い方を想像して、試していくことが大切だ」というお話もあった。衛星データを使ったビジネスはまだ過渡期なので、掛け合わせでさまざまなビジネスが創出されてくると思う。
なので、アイデアができたらそれをアウトプットして試してみる、その繰り返しが”何か形になるもの”を生み出してくれる。それは10のうちの1かもしれないし、100のうちの1つからもしれない。それを探り当てるまで進んでいこう。
そして、このデータを利用するには最近何かと話題のPython(パイソン)というプログラミング言語が必要になる。パイソンは統計処理や数値計算を得意とするプログラム言語で機械学習などを得意としているので衛星データを集計・蓄積して、”どんな植物が生育しているか”などの答えを導き出すのに使われる。
まずはどんなもので処理するのかがわかっていないと衛星データでやりたいことができるわからないので、少し学んでいくことを第一歩にしよう。
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