天候不順で打ち上げが延びていたH2Bロケットの打ち上げが推進系の異常で打ち上げが直前で中止になってしまいました。具体的には液体酸素の圧力を調整するバルブが既定の圧力に行かない前に圧力が抜けてしまう事象になったということです。会見でもあったように正常の圧力がかからないと液体燃料が規定どおり供給できない→宇宙へ飛び出す推進力がでない→打ち上げ失敗につながります。
車も時々リコールが起こりますが、車の種類の割にはそれほどリコールが出ない。ロケットはまだまだ生産している絶対数が車と比較にならないほど少ない、つまり”経験”や”実績”が少ないので、こういった事象が起きやすいんだと考えています。 言い換えると、”技術が成熟していない”ということにもなると思います。
”推進系統の異常”というとよくあるのが、今回もあったように配管やバルブからの漏れです。漏れがなぜ起きるのかは
・接続部の取り付け不備
・パッキンやOリングの欠陥
なども考えられますが、そこは組み付ける時にしっかり見ているかと思います。
そうすると
・金属溶接の箇所からの漏れ
がけっこうありうる原因です。
僕はロケットの骨組みを作る構造系と言われるところの金属の溶接技術を担当した事が有ります。かなり高い強度を要求される箇所であり、その特殊な硬い金属をしっかりもう一方の金属と溶接(厚み分が全て溶接されるまで)する必要があり、高い温度で溶接しないといけないものでした。材料がもつ限界近くの温度で金属どうしをくっつけていきます。
しかし、そこまで上げると熱がかかるところが、急に冷えて金属組織が粗大化し、溶接のさかい目で”割れ”が出やすくなる。イメージは細かい砂と10円玉ほどの石が隣合わさってくっついているような感じになってしまいます。組織の大きさが違ってくるのでその部分がもろくなっている。そうすると圧力がかかった時にそこからヒビが入って漏れてしまう。それを防ぐために金属をあらかじめ予熱しておいて急に冷えて組織がおおきくならないようになどの工夫をしています。
ロケット、宇宙機の開発には新たな材料の開発が不可欠で、この辺りは化学の範囲になってきますが、どんどん新たな材料が開発され、上のようなロケットを作るうえでの問題点を解決してくれる材料の登場、それが宇宙開発がすすむ大きな一歩になっていくんだと思います。
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